前回は魔術についてお話しましたので、今回は魔導書(グリモワール)についてお話していきたいと思います。
魔術、魔術書、魔導書とたくさんの言葉が出てきますが、初心者の方でも分かるように順を追って説明していきたいと思います。
魔導書(グリモワール)とは
まず、魔導書(グリモワール)の定義ですが、主に悪魔を中心とする超自然的存在を従えることで何らかの霊的な手段によって目的を達成する書物のことです。
ファイナルファンタジー等のゲームで言えば、黒魔法を直接使う「黒魔導士」というジョブ(職業)では魔導書を使っていないと思われるんですね。そうではなく、魔導書(グリモワール)を用いるのは召喚士のイメージです。
悪魔(もしくは天使、精霊など)を召喚し、その悪魔を使役して目的を達成することに使われるのが魔導書なのです。
ですから、必然的に魔導書の中身というのは、「悪魔を召喚する方法」および「悪魔を使役する方法(言うことをきかせるための方法)」ということになります。悪魔を召喚するため、そして召喚したらお願いを聞いてもらう(というか、強制的に命令する)ために何をすべきかが書かれているのが魔導書(グリモワール)です。
悪魔の召喚・使役に使われるのが、魔導具と呼ばれるマジックアイテムです。魔導具のなかでも一番有名なのは、魔法陣(魔法円)または魔法杖(杖)でしょう。ハリー・ポッターシリーズを見た人は多いのではないでしょうか。あれが魔法杖です。
魔術には魔導書が必要?
魔導書が魔術に絶対に必要なのかと言えば、そんなことはありません。なぜなら、魔導書というのは「悪魔等を召喚し、使役する手順書」だからです。
ですから、魔術師が直接魔術を行使する場合には魔導書は必要ありません。再度ハリー・ポッターシリーズを例に出しますと、ほとんどの魔法は召還魔術ではないため、魔導書の必要はないように見えます。
魔術書は悪魔の召還の有無にかかわらず、「魔術が載っている書物」であり、意味としてはかなり広いものになります。その一方で、魔導書というのは「悪魔等の召還及び使役の手順書」であるために、用途がだいぶ狭まってくるのですね。
さらに言えば、魔術には魔術書自体が不要です。例えば、東南アジアやアフリカ、南アメリカ等の魔術(呪術)というのは紙に書かれて残されているというよりは、魔術師間での口伝により現代まで伝えられている要素が大きいです。
魔導書の効果
魔術には多種多様な効果がありますが、魔導書の目的はかなり狭いです。
その主な目的は2つであり、「愛の獲得」「財宝の獲得(宝探し)」です。「愛」のほうは理解できる(魔術でも「愛」は一大テーマ)と思うのですが、宝探しのほうは今の感覚だと「?」となりますよね。
実は、魔導書が大流行した中世~近代初期においては、今とは比べ物にならないくらい「トレジャーハンター」という職業の人が多く、特にヨーロッパでは宝探しが盛んにおこなわれていたという背景があります。
さらに言えば、当時は「秘宝」というのは様々な化け物や悪霊に守られているため、霊の守りを突破して財宝を手にするには超自然的な力が必須と考えられていたのですね。目には目を歯には歯を、ではないですが、当時のトレジャーハンターからすれば魔導書は実用道具だったのです。
実在した魔導書たち
最初の魔導書は、紀元1~5世紀に書かれたと言われる「ソロモン王の遺言」だと言われています。
そして、一番有名な魔導書だと思われるのが、「ソロモン王の鍵(ソロモン王の大きな鍵)」と呼ばれる魔導書になります。伝説上はイスラエルの賢王ソロモンが書いたと言われていますが、実際の成立は中世(14~15世紀頃)と言われています。
ソロモン王の鍵には(悪魔に限らず)様々な霊的存在の使役方法が書かれていますが、これをもとにして多くの魔導書が生み出され、例えば「レメゲトン(ソロモン王の小さな鍵)」「小アルベール」「大奥義書」「黒い雌鳥」「ホノリウス教皇の魔導書」などが有名です。
架空の魔導書たち
最後に、魔導書にはハワード・フィリップ・ラヴクラフトの創作した「クトゥルフ神話」に登場する架空のものが多数あることを申し添えておきます。
一番有名なのは、何といっても「ネクロノミコン」でしょう。しばしばゲームにも登場する名前ですが、これは実在の魔導書ではなく、架空のものです。
さらに、クトゥルフ神話には「エイボンの書」「妖蛆の秘密」「ナコト写本」「ルルイエ異本」「グラーキの黙示録」「無名祭祀書」などの架空の魔導書が存在。ここには、クトゥルフ神話における「古き神々」の召喚方法などがかかれています。(そういう意味では、架空とはいえ用法的には正当な「魔導書」といえるでしょう)
以上、今回は魔導書(グリモワール)について書いてきました。参考になりましたら幸いです。